序文
戦略的リスク管理は、それが単独のものであろうが、全社的リスク管理プログラムに統合されたものであろうが、リスクを組織の戦略に対する単なる脅威として把握するのではなく、競争優位性に向けて活用できる状況を特定するものである。戦略的リスク管理ではリスクを管理し、機会を把握するときに、戦略計画、リスク管理、そして戦略実行の分野が学際的に交差する領域を射程に収めことで、損失を回避するだけでなく、不確実性を削減して機会を把握する。この学際的なアプローチによって、不確実な環境の中でも組織目的を達成するときに業績をさらに向上させ、かつ強靭性を高めることが可能となる。
戦略活動に携わる人はすべて、この実行ガイドで述べられる実践的なアプローチと事例から学ぶことができるであろう。本書でのわれわれの目的は、次のものである。
・ 戦略策定と実行において学際的で実践的なリスク管理を応用するために、それを開発、設計、実
行する公共団体、私企業、非営利組織に対してガイダンスを提供する
・ どのようにして先進的な組織が戦略的リスク管理を活用して価値を創造しているか、その事例を提供する
このガイドを活用することで、次のような成果が期待できる。
・ 目的を達成するために組織のリスク管理能力を向上させる
・ 価値に基づいた意思決定能力を組織全体で強化させる
・ より大きな機会を獲得できるリスク認知力を意図的に鍛え直す